2007
04.04
(水) - West.Mix

戯曲「二人の男とそれを取り巻く環境と女」〜終了

これで終わりです。の巻


今までの、戯曲はこちら

第6場


−二つの並んだベッドに晶子、理恵子が座る−
−男2、Yシャツ、ジャケットなしで登場

男2「あ、今日は遠藤です。」
男2「理恵子、大丈夫か?」
女2「う、うん。いいんだよ?キャバクラ行って新しい女の子探しても。」
男2「そんなんじゃ、ない。なんとなく悪くて」
女2「なにが悪いの?」
男2「…それが判らないんだよ、でも心配なんだ!」
女2「どうせ、私の金目当てなの?」
男2「(強い口調で)そんなんじゃない!今は不思議と入れ替わる事が出来る。今の俺は外見も中身も遠藤だけれども、これが、不思議と、同じ外見の遠藤でも中身が須藤さんになる事が出来る。不思議だけど入れ替われるんだ。で、俺、遠藤の体と心は会社を辞めた。今は須藤さんと入れ替わって須藤さんの給料で二人でやっていける。大企業の課長だ。結構貰ってるんだぜ。安心しな。」
男2「…で、遠藤の体は空いているので、この体でお前と…晶子さんを看病できる!同じ体で毎日人格が入れ替わる事で、ずっと看病できるんだ。ずっと、ずっと…、って俺、須藤さんの役の時にもそれなりに仕事できるんだぜ、役職なんて関係ないのな、”課長”らしくやってるよ。だから、この偶然を利用しない手は無いんだ!」
女2「遠藤のくせに、何言ってるのよ!キャラじゃないよ。(照れくさそうに)あんたなんてゴデナシよ。」
男2「ゴ、ゴデナシ?」
女2「ロクデナシより一ついいって事よ。」
男2「まだ、その扱いかよ。」

男2「晶子さん、遠藤です。こんな外見ですいません。」
女1「いいんです。気持ちは伝わります。すいません。入院費まで出してもらって。」
男2「パイ食べませんか〜。」
女1「ありがとうございます。ありがたく頂きます。」
男2「それは、内面が須藤さんの時に言ってください。」

−暗転、男2下手にはける。男1Yシャツ、ジャケットなしで登場

男1「晶子さん、須藤です。こんな格好ですが、解りますか?」
女1「あ、話し方で解ります。」
男1「随分と、苦しい生活をしていたんですね。」
女1「隠していてすいません。」
男1「そんなのはどうでもいい。お体は大丈夫ですか?」
女1「大分、良くなりました。」

男1「理恵子さん、須藤です。遠藤じゃなくてすいません。」
女2「いえいえ、須藤さんすいません。なんか、仕事…大変でしょう?」
男1「それが、遠藤君が、良くやってくれてます。僕なんかにわからない、浮かばないアイデアが出てるみたいです。僕なんて、役職に甘えていたんですかね。考えさせられます。」
女2「あんな男…あ、性格の方です。遠藤も世の中の役に立つなんて」
女2「あ、入院費すいません。」
男1「いいんですよ、半分は遠藤君の給料のようなものですから。そんな事より、こうやって毎日二人を看病できる事が嬉しい。」
女2「本当にすいません。」 男1「いいんです、これが生き甲斐って言うか、結構楽しいものなんですよ、これが(うれしそうに)それでは、また。」

−暗転−

第7場


−二つのベッドの上に、女1(晶子)、女2(理恵子)が横たわっている。

女2「ねぇ?起きてる?」
女1「う…うん、起きてる。」
女2「ねぇ、こんな事聞いてなんだけれど…須藤さんの事が好き?」
女1「好きか、嫌いかって言ったら…(ためらって)好きかな?」
女2「私はねー、遠藤が好きなんだッ!きっと、ずっと好き。ロクデナシだけど好き。きっと意味なんて無いんだなぁ〜。」
女1「私…そんなに恋愛したこと無いし、両親の看病だ大変だったから。」
女2「…辛いね、辛かったんだね。」
女1「でも、優しいし、多分、好きなんだろうなぁ〜。」
女2「正直になりなよ!」
女1「でも、理恵子さんも正直になってないんじゃない?」
女2「私はいつだって正直さ!いやなら嫌と言う。でも…好きなんだ。」
女1「理恵子さん…夢ってある?」
女2「うんとね、田舎で暮らすのが夢なんだ。故郷で喫茶店を開くのが夢。キャバクラで働いてお金もあるし、そろそろキャバクラで働く年齢でもなくなったしね!まぁ、そのくらいなら遠藤にもできるでしょ!」
女1「いいなぁー、夢。私、ずっと仕事だけに生きてきたの。両親の治療費にね。なんでもやったの。でも、今、振り返ってね、夢ってないなぁーって。でもね、私、誰かの記憶の中に残っていたいの。もう、私という存在があった事を認めてもらいたいの。」
女2「大丈夫。須藤さんが居る。きっと大丈夫。そして私も…」
女1「そうだよね、きっと遠藤さんなら判ってくれるのかも。私も、須藤さんの記憶に残ってくれればいいな。」
女2「いまどき、須藤さんみたいな誠実な人は居ないよ。遠藤なんて、女遊びがひどいしね。」
女1「そんな事ないよ。須藤さんの時に、理恵子さんの事言っていたよ。僕には理恵子しかいないってね。」
女2「(照れて)アイツは、いっつもそう言うのよ。」
女1「…私達、もう長くないのかなぁ〜。」
女2「何言ってるのよ!私達はピンピンよ!保険金で大儲けしてやるわよ!ハッハッハ!」
女1「生命保険、入っていたんだ。」
女2「その位、私だって私を守るわよ。でもね、相続人を遠藤にしてあるの。」
女1「だって、両親が…兄弟は?」
女2「私はいつだって孤独よ。この仕事始めた時から私は勘当を受けているの。だから、いま、接点があるのは遠藤だけ…」
女1「私も両親を失っているけど…。両親がいるだけイイよ!」
女2「まぁ、そうだけれどね…結婚したかったなぁ〜。子供が見たかった。両親に孫を見せてあげたかった…(嗚咽)」
女1「まだ、できるよ!まだ、大丈夫だよ!」
女2「うん、でも、自分の体は自分が一番知っているの。…なんか弱い私なんて変だよね。キャハハ。笑って過ごそう!晶子ちゃん、友達になってくれてありがとうね。」
女1「そんなの当たり前じゃない。私達はもう親友よ。」
女2「親友…か。私、いっつもそういうのに騙されてきたんだ。今度は大丈夫。今度こそはって…。」
女1「大丈夫、大丈夫だよ。私達きっと…上手くやれる。今度こそ、上手く生きれる!」

−暗転−

−ナースコールのBGM−

看護婦(声)「201号、202号室の部屋からナースコールです!」
医者「すぐに行く!」

−医者、上手から現れる

医者「なんてこった。二人同時とは。至急、ICUに入れるんだ。」
看護婦(声)「血圧、下がってます!心音低下!」

医者「緊急を要する。親族関係に連絡の準備!」
看護婦(声)「わかりました!」

看護婦(声)「それにしても、今日までなんとも無かったのに。…こんな事があるなんて!」
医者「だから、我々の仕事があるんだ!早く連絡!」

医者「(汗を拭きながら)大丈夫、大丈夫ですよ。それにしても、今日は当直は俺一人か。両方を見ることなんて出来ない!…いやいや、『出来ない』なんて我々の職業にはない。『できないんではない!やるんだ!』晶子さん、理恵子さん、頑張ってくださいねぇ〜」

看護婦(声)「201号の晶子さん、連絡つきません。知人でもいいでしょうか?」
医者「わかる番号全部にかけろ!緊急事態だ!」

看護婦(声)「202号の理恵子さん、親元連絡つきません、知人でも…いいんですよね!」
医者「だ!」

医者「頑張ってくれよー、晶子さん、理恵子さん。もうすぐ、あなたの知人が来ますからねぇ〜」
看護婦(声)「血圧上がりません!」

医者「なんとかするんだ!」
看護婦(声)「201号室、須藤さん、202号室、遠藤さん、連絡つきました!」

医者「時間がない!、急ぐんだ!」

−暗転−


第8場

−医者はける。男1・男2現れてスポットライト−
−手術室の前のイスの風景、赤いライト−

男1「なんだって!晶子さんが!」
男2「り、理恵子、まさか、まさか…だよな。」
男1「なんで、なんでこんな事になるんだ!」
男2「いままでは、なんともなかったのに!」
男1「わ、わからない。」
男2「わ、わからない。」
男1「あ、晶子さん、いや、晶子は大丈夫なのか!」
男2「り、理恵子は、大丈夫なのか!」

−(ピー)音と共に、暗転

医者「残念ながら、二人とも…全力を尽くしたのですが…ご愁傷様です。」

男1「何を持って、愛というのかは判らないだた、言えるのは”その人”が居なくなる事がとても悲しい」
男1「(声を強めて)さあぁ、理由なんてそんなもんだ!」
男2「だから、今だから言える!」
男1・2「お前だけだ!愛してる!」

−暗転−

男1「長くなかったな。」
男2「えぇ。あっけなかったです。」
男1「本当だ。ほんとうにあっけなかたな。」
男2「お互い、悲しかったんですかね?」
男1「確かに、悲しい。でも、もうどうしようもならないんだ。」
男2「僕らの心の中にはいつも、ずーっと、宙の向こうまで彼女達はいるんですね。」
男1「あぁ。」
男1「(しばし考えて)君、うちの会社に入らないか?」
男2「無職の僕としては、とても嬉しいんですけど…ゴメンナサイ、お断りします。」
男1「やっぱりだめか。」
男2「理恵子の田舎に行って喫茶店でも開こうかと思います。それに、また入れ替わっても困りますしね。」
男1「そうだな。じゃあ、俺が偶数の時間に寝るから、君は奇数の時間に寝てくれ。」
男2「こうなった今、もう、そういう能力もないのかもしれませんね。」
男1「まぁ、お互い、体に気をつけて」
男2「ですね、須藤さんも働きすぎに注意してくださいね。俺、須藤さんの時大変だったんですから。」
男1「じゃ…。」
男2「じゃ!」

−二人握手をして上手、下手にはける−

−暗転−
BGM「RAIN」ザ・ユウヒーズ

音小さくなり、全員出てくる、礼。

−完−



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