アンガールズ田中さんのエッセイ『ちょっと不運な方が生活は楽しい』が文庫化されたので早速買ったのが土曜。
翌日曜の朝から読み始めたのだけれども面白くて一気に読み終わってしまった。
エッセイの文体がとても上手い。本業の作家ではなくて芸人として田中さんの事はテレビで見たりラジオで聴いたりしているので田中さん込みで状況が想像できてとても楽しく読めた。
こういうエッセイが書けるようになりたい。

さて、作者の田中さん。正直、お笑い芸人としては(ネタとかは)あまりよく分からないけど、芸能界という魑魅魍魎の世界の中では凄く真面目な人だと思う。センスで残っていると言うより与えられた役割を真剣にこなす感じ。ラジオとかを聴いているとわかるけれどごく普通のサラリーマンと同じ感覚。
まだテレビ慣れしていない頃、日本テレビの24時間テレビ恒例の24時間マラソンにアンガールズが選ばれた際、おぎやはぎの小木さんから「本当に完走したら海に連れて行く」と約束されたそうで、無事24時間完走後のインタビューで「小木さーん!」「小木さん海つれってくださいー」と叫んだ事があった。小木さんと田中さんは友達みたいで良く小木さんの家に集まってスポーツ観戦とかしていた流れからだと思う。ただ、感動ポルノとも呼ばれている24時間テレビのフィナーレ間近のマラソンゴールに対して演者として求められているセリフでは無い。
その後(恐らくかなり怒られたのだと思う)、きちんと反省しちゃんと”演者”としての仕事を全うしている。これも反省を踏まえた上での真面目な行動である。言い方は変化も知れないが「真面目に芸人をやる」という事なのだろう。
また、田中さんは『ラヴ上等』(不良だらけの恋愛リアリティーショー)などの「不良だけど純粋な面もある」みたいな番組に異常な嫌悪感を持つ。不良やいじめっ子はいじめられる人が存在しているし、社会に迷惑をかけている部分がある。いじめられっ子の中には生涯もののトラウマを持つことになった人も多いと思う。
そういう人が”更生したから偉い”とか、”そんなワルなのに恋愛は奥手なんだ”となっても元が悪いんだから更生して初めて普通の人だし、普通の人だって恋愛は十分奥手。当たり前のこと。
エッセイを読んでわかったけれど、一般論でそういう発想(嫌悪感)を持っているのではなく、実際に学生の頃に不良にはかなり痛い目にあっているからやはり許せないんだろう。そこもよくわかる。

芸人のタイプにありがちな、破天荒な行動だったり、時計や車や古着が好きという点はないっぽい。
苔と紅茶が趣味。バイオリンも弾ける。この趣味はある意味貴族の世界だ。ちょっと特殊と言えば特殊な趣味だけれどなぜこういうものに興味を持つようになったか?もエッセイを読む事で理解できる。たしかにこの人は不運を武器に変えている。
長身+痩せ型、薄毛。
そこは芸人、コンプレックスを武器にしている。昨今容姿を弄るのはNGだが、芸人はそれを芸にしている人がいるのでそれを禁じられたら職業を失う芸人も出てくるだろう。何事にも”いい塩梅”ってものがある。
お笑い芸人をやりながらも学生時代からの夢だった建築士の夢の実現として実際に2025年に2級建築士(合格率約20%)の試験に合格している。
50歳位になって芸能界という昼夜や休みが不規則な仕事をしながらも勉強を怠らない。かなり大変な事だと思う。
ある程度のレギュラーなどを持った芸人はいくら位の収入を得ているかはいまだに全く想像が付かないけれど、この人は「報われた人」だと思う。
世の中を生きてきて真面目に頑張った人は全員報われてほしいし、僕だってもっともっと報われたい。しかしなかなかそういう世界は訪れずに”人を騙しても稼いだモノが勝ち”という下品な世界は今でも続いている。
ケンドーコバヤシさんと共演しているラジオの最後の宣伝で、「『ちょっと不運な方が生活は楽しい』文庫版発売になりました!」といった後、直ぐにケンドーコバヤシさんに「んなわけあるかい」と言われるのも良い。ついでにいうとケンドーコバヤシさんの指摘の方が正しい。
でも、生活は続くのだから現状がどうであれ楽しめる方法を考えるのがコツなんだな。と、思った。
そのマインドは誰でも持つ事は可能。僕ももっと楽しめるように生きていこう。

