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ソンシの村

プロローグ

~事実を積み重ねることが必ずしも真実に結びつくとは限らない~

テレビ局には無数のビデオテープが存在する。
何らかの理由で放送を見送られた「お蔵入り」と呼ばれる番組の素材テープも数多く保管されている。
そしてそれら「お蔵入り」テープの中には当時のスタッフや関係者の異動などによって詳細がわからなくなったものもあり、何故その番組が放送できなくなったのか?さらにはそのテープの中には何が映っているのか、記されていないものも数多く存在する。

この番組は当時放送が禁じられていたある「お蔵入りテープ」を発掘し、その当事者たち等から了解を得て再編集したものである。

5月25日

高知の山奥にある施設がある。現地民でも知っている人は少ない。とある町から車で15分の場所にその施設はある。

その施設は、ある大企業に勤めていた会社員が会社を辞めて私財を費やしてまで建てた施設。名前を”イケハヤランド”と言う

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その施設を束ねているのは通称”イケハヤ”。このイケハヤランドでは自分の名前を出さずに全員あだ名で呼ぶようにしている。その方がプライバシーを守れると言うイケハヤの意向である。

社会に生きるのが辛くなったり、社会に適合できなかったりする人たちが”イケハヤランド”を訪ねていた。

その全ての人を受け入れるイケハヤを界隈ではいつしか”ソンシ”と呼ぶようになった。

今回は、このイケハヤランドのドキュメントを撮ることになり取材班が取材に行く事となった。

6月2日インタビュー

記者「なぜ、このような施設を?」

ソンシ「最近の世の中って生きにくいじゃ無いですか?うつ病とかも現代病って呼ばれています。僕はそう言う生きにくい世の中を変えていきたいんです」

記者「財源はどうしているのですか?私財だけでは限界があると思うのですが」

ソンシ「僕はブログやサロンを別途運営していて、その収入はサラリーマンの年収の何倍にもなっているので問題はありません。ランドの住民には毎月10万円を支給して自由に生活してもらってます」

記者「なぜそこまでして?」

ソンシ「僕は田舎は資本主義のフロンティアだと思ってます。この施設を皮切りに生きやすい新しい社会を作りたいんです」

記者「素晴らしい考えですね。私財を投げ出してまで生きやすい生活のための受け口を作るとは」

ソンシ「将来的には、図書館や美術館などの施設も作り芸術に触れる事や、うつ病に悩む人に対する”うつ病村”なども考えています」

記者「なぜ?高知を?」

ソンシ「東京は消耗するんですよ。満員電車にクソ上司。サラリーマンっていう生き方はロックじゃ無いんです。ここは空気も綺麗だし緑も多い。近くに行けば鰹のタタキとかも食べられます。まずはこの高知を拠点として選びました」

記者「ありがとうございました」

ソンシは手を振って我々を見送ってくれた。

—インタビューはここで終わった—

7月5日

今日は天気が良い。レクレーションとしてバーベキューが開かれた。バーベキューには、コンサル業界のサラリーマン人生に疲れたブロガー通称”パンチ”と、ネットでイケハヤの事を知り、人生に疲れた通称”原チャリ”、埼玉で介護施設に勤めていたが、第二の人生を歩むべくイケハヤランドに足を踏み入れた通称”スティーブ”が参加していた。

バーベキューグリルには厚揚げや野菜が盛りだくさんであった。肉はソンシの意向により最小限に抑えられている。

ソンシは自身でバーベキューを作り皆に振る舞った。
その頃のみんなの目は輝きを取り戻し、非常に生き生きしたものとなっていた。ソンシはその光景を見ながら「うん」とうなずいて、厚揚げを再び焼き始めた
そう、その目は生き生きとしていた。

10月18日

ある日、事件が起こった。

番組の取材で”スティーブ”のインタビューを撮る際にスティーブがもう何ヶ月も10万円をもらっていないと言うのだ。ソンシに確認しようとした所、何回チャイムを鳴らしても家から出てくる事はなかった。

スティーブに再度インタビューを取ると「請求書を出すと言う形で10万円を貰っているのですが、ここ数ヶ月、請求書を出しても貰っていないんです」

イケハヤランドでも人間不信になってしまったスティーブはイケハヤランドを出る決断をする。

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聞くと過去にも似たようなケースがあったようだ。

ランドから、一人、また一人と去っていく。
人生の更生を図れたのだろうか、ソンシは去る者は追わない。

12月26日

年の瀬が迫ったある日、ソンシが大金を手に入れた事を住民が知る。仮想通貨で実に日本円として1億円の金額を手にしたと言う。

再びインタビューに向かう

記者「大金を手に入れられたとの事ですが」

ソンシ「いやぁ、僕も億り人ですよ」

記者「その金額をイケハヤランドに費やす訳ですね」

ソンシ「いえ、仮想通貨はまだまだ上がります。ここで日本円にするのは愚かな事です。しばらくは塩付けです。ブログとサロン事業でイケハヤランドはまだまだ拡張可能なんですよ、ハハハ」

記者「では仮想通貨はしばらくそのままにしておくと」

ソンシ「まずはこの仮想通貨を元に他の仮想通貨に投資しようと思っています。これは資産運用ですね。間違えないです」

2月22日

“パンチ”と”原チャリ”はソンシが1億円の資産を手に入れたと言うことでソンシに金の無心をした。
防犯カメラには深夜にソンシの仮想通貨を奪いにソンシの家に忍び込むシーンが映されていた。
「けけけ、警察よびますよぉ〜」
ソンシの声は虚しく空を駆け抜けるだけであった。

当時ソンシは現金2万円ほどしか持っておらず仮想通貨のハードウェアウォレットのみが残されていた。

後日、警察の取り調べにより事件は傷害事件になった為、このイケハヤランドのインタビューは中断され、テープは地下に保管され放送されることはなかった。

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1年後

1年後、”スティーブ”からTV局に連絡があったため、取材班は連絡を取ることにした。

記者「お元気そうですね」

スティーブ「えぇ、おかげさまで。介護福祉士と言う国家資格を持っていたので、再就職もすぐにできました。ブログはもう更新していません。結局ブログで食べていく事って虚像だったんですよ。」

スティーブ「今思えばソンシは何を考えているかよくわからなかったんですよ。毎日言うことが違う。今だからそう思えるんですけれど、当時は本当に鵜呑みにしていました。1年間を無駄にしましたが、今は元気にやっているので、まぁ勉強かな?と思って」

少しふくよかになり元気そうなスティーブを見送り、取材班は安堵の息をついた。

その後、気になった取材班がイケハヤランドを再び訪れた。

1年ぶりの高知、車で山道を登る。

しかし、そこには誰も残っておらず、イケハヤランドは荒れ果てていた。
6畳一間のソンシの寝室から、ソンシが持っていたと思われる仮想通貨のハードウェアウォレットだけが残されていた。
取材班が持ち帰り、調べてみたところ日本円にして1万円ほどまで下がっていた。

この番組はここで終了している。

~あなたには真実が見えましたか?~

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