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彼に足りないもの

行きつけの店に有名(?)なお客さんがいる。その店がオープンしたばかりの頃からの常連客である意味黎明期を支えたレジェンドである。

歳は40歳位。僕とそんなに変わらない。
そんな彼には一つ欠点がある。
“人の話を聞かない”のだ。人の話を聞かないだけならまだ良い。なぜなら、ここはBARであり、仲良しクラブでは無いからだ。聞く必要がない。
でも、それを超えるのが、「自分が話したい事は何があっても話す」と言う点である。これが厄介だ。
入店するなり、ガーガーと自分の話したい事だけ話す。他の人が話を広げようとしても「人の話を聞かない」ので何にも役に立たない。話している内容に違いがあって何気なく指摘しても聞かない。酒癖が悪いわけでも無い。ただ、場の空気を壊すのだ。

僕のいきつけのBARはいわゆる”ショットバー”ではなくて、地元民が酒を飲むのに集まるような店である。居酒屋に一人で入ってもつまらないし、酒しか注文しない。なら誰かと酒を飲みながら時間を共有しよう!と、そんな店。
そこで、自分の話だけされると他の人が困る。他の人に会話のバトンが回ってこないのだ。

Bar opus5

僕はその人がちょいと苦手なんだけれど、僕同様に同じ思いをしているお客様は意外と多いらしい。その度に「あの人は子供だ」、「あの人は常識がない」と言うような悪口を聞いていた。
別に女性客にセクハラするわけではないし、先ほど書いたように酒癖も悪くない(ただし飲むのはすごく遅い。レモンサワーをウイスキーを飲むかのスピードで飲む)

ある時の一例だが、某国民的RPGが流行っているときに店でその話題になった。こういう時の会話のお約束は「ちなみにどこまで進みました?」である。ネタバレ厳禁。それは誰でも一緒である。そうやって進んでいる人とまだ最初の方の人が仲良く話しているときに”彼”はやってきた。彼はそのRPGをクリアしたそうで、ネタバレをばんばんする。念のため「まだクリアしてない人がいるから」と言ったのだがお構いなし。僕は店を出た。

…「彼には何が足りないのだろう?」時折思っていた。何か一言で彼の問題を解消できるような言葉は無いものか?と。

で、ある時、仕事中にその言葉が降ってきた。わかった、「社交性」である。

社交性はすぐに身につくものではない。周りと合わせる事も社会(会社もそうだが)では大事だ。家の中で一人で過ごしていれば問題ないし、仲良しグループだけで飲んでいるなら問題はない。けれど、色々な”他人”が集まるバーのような場所でも彼は自宅のように振る舞うのだ。

人の話を聞かないってのもそう言うことをやってこなかったから(経験してこなかった)かもしれない。彼も会社員だが、彼の同僚の話を聞いた事はないし、彼がバーに同僚を連れてきた事はない。

もしかして、彼は生きるのがちょっと不器用なのではないか?って思うのだ。

心を開いてくれれば僕達も気さくに話しかけられるんだけれどなぁ、と思う。マスターも「アイツには何を言っても無駄」とあきれ気味。何回も説教をしているらしいのだけれど、その時だけしゅんとして反省するけれど次に来た時にはまたいつもの通りに戻っているらしい。

彼が若ければまだよい。きっと自分で気づく時が来る。恋愛がきっかけかもしれないし、仲間内の喧嘩がきっかけかもしれない。
でも、彼も僕と似た40過ぎの初老の男性だ。勿論独身。

僕は彼が嫌いなんじゃなくて、同じ初老として哀しくなってくるんだ。”悲しい”より”哀しい”と言う文字の方がこの場合しっくりくる。
彼が気づいてからでは、もう遅いんだよ。

これから、僕らはどんどんと孤独になっていく。
是非、自分を「哀れだ」と思わないでほしい。それを思ったら最後なんだ、僕たちの年齢ってのは。

でも、逆に考えるとまだ40代だ。社会では脂ののったベテランの年齢。
さぁ、ラストチャンス。是非、身に着けてほしい、社交性を。これからの人生を生きやすくするために。

この事を彼に言ってもまったくもって聞く耳を持ってくれないので、このエッセイにて間接的に伝えることにする。

では。

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